ミャンマー渡航記_第2回_ヤンゴン滞在

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ミャンマー渡航記 ―― ヤンゴン滞在

(第1回からのつづき)

ホテルで一夜明け、翌日は市内の複合ビルへ向かった。夏衣とサンダル、せっかくミャンマーに来たので男性も身につけるロンジー(男物はバッソというらしい)と、乾季にもかかわらず雨が降ったので折りたたみ傘などを物色する。タバコ専門店では予想通り私の好きなオーガニックタバコのアメスピはなく、数年ぶりにマルボロを1カートン調達した。

買い物のたびに店主らしき人物に「外貨両替できますか?」と聞いて回る。

あった。しかも大変親切だった。商人専門の両替サイトらしきものをスマホ画面に表示して見せてくれた。

  • 大手ショッピングセンターの看板レート:10,000円=210,000チャット
  • スマホ画面のレート:10,000円=282,000チャット

「手数料は?」と聞くと、不要だという。感動した。

まずは3万円ほど両替したい旨を伝えると、手配した運搬人が届けてくれるが2〜3時間かかるという。それまでの間、Tシャツ・木綿か綿麻のスカーフ・サンダル・ロンジーなどを安く買いたいと相談したら、店のスタッフ——23歳と17歳の娘二人——に案内させるという。

「そんなことお願いして良いの?」
「暇だから良いよ」と40前後の店主らしき女性が言う。

娘二人と、5〜6階建ての数百店舗が入る大きなビルを1階から4階まで歩き回った。彼女たちの知人友人らしき人が店員している店のみならず、たくさんの店に「こんなん置いてますか?」と聞いて回ってくれた。後ろからついて行く私が二人の歩く姿を撮影していると、たまに振り返って微笑む。なんと優しい娘たちだと、感動した。

目的のものを全て入手できたわけではなかったが、Tシャツ・サンダル・折りたたみ傘は手に入った。店に戻り店主に礼を言い、娘たちに少しアルバイト料を渡したいと申し出た。店主は不要と言い、娘たちに直接渡そうとしても受け取ってくれない。

仕方がないので翌日、ジャンクションシティの高級スーパーで大量のチョコレートを買って再訪した。店主が不在だったので身内らしい30歳ほどの男性に渡し、今日はドル・人民元・バーツを両替したい旨を伝えると、昨日同様快諾してくれた。1時間後に届けてくれるという。

昨日は10,000チャット札がなく5,000チャット札のみで分厚くなりすぎたため、今日は10,000チャットにしてほしいと頼んだらその通りにすると言われ安堵した。この日の円レートは10,000円=280,000チャット(前日比2,000チャット安)。

綿か綿麻のニットキャップはどこで買えるか尋ねると、面白いことに昨日と同様、娘二人に案内させるという。娘たちはこのオヤジを引率するのが休憩の口実にもなるのか、嬉しそうに笑っている。昨日同様ビルの中を私の欲する物を探し回る二人の後を歩く。楽しく嬉しい思い出となった。

両替は3日連続で同じ店を頼った。3日目も普通に両替できたが、スタッフは交代しており、娘二人とは会えなかった。


リンリン君

宿はチャイナタウンの古いビジネスホテル。毎日朝食付きなのはありがたいが、4泊全てほぼ同じメニューだった。

愛想の良い28歳の男スタッフ、リンリン。やや浅黒く、いかにも東南アジア人といった風貌。熱心に「女を買わないか」と言ってきた。マルボロを欲しがるので毎日一箱プレゼントした。給料を聞くと正確には言わないが、大体月額300,000チャット程度らしい。

ダラ地区に家があり、「ダラに行かないか、案内する」という。ごめん、興味ない。有名なパゴダにも行く気がない。そんなところは詐欺師の巣窟だからだ。元来、観光名所にあまり興味がない。

私が好きなのは、旅先の街の通りで人々が暮らし、働き、移動している姿を見ること。

近くの通りでおしゃれなカフェは見当たらないが、通りに小さなテーブルと椅子を置いた簡易カフェを見つけた。店主は同年代のオヤジ。日本人が好きだと言い、息子は大阪にいるという。先客のやや年上の女性も愛想が良い。

微笑みの国として隣国タイは有名だが、ミャンマーはさらに奥行きが深く、慎み深い微笑みを持った人々の国だと感じる。

紙コップに甘いミルクティー、2,000チャットだったと思う。インドのチャイ文化の影響だろう。アウンサン将軍と30人の同志は鈴木大佐の下で軍事訓練を受けた。以前のビルマはイギリス支配下にあり、お得意のマイノリティ支配——大量のインド人をビルマ人の管理に使ったのだ。インドのチャイ文化の名残がそんな流れだとしたら、少し悲しい。

チャイ屋のオヤジに再訪を約束し、マッサージ屋・日本人経営の寿司屋・パン屋2階のカフェ・屋台のタミンジョー(チャーハン)などで過ごした。

2日目にはインド人街らしき衣料品店の多いエリアでカレーを食べ、ロンジーを買い、ホテルに戻って着替えた。ホテルを出たところの衣料品屋台で、ポケット付き前ボタンのペラペラ化繊Tシャツ(おそらく日本円で500円しない)を2枚購入し、コーディネートした。

にわかオヤジミャンマー人の出来上がり。

ホテルに戻ると、交換用シーツを持ったリンリンが部屋の前を通りかかり「You are Burmese!」と嬉しそうに笑い、ズレかかったバッソを締め直してくれた。


エンペラー

ヤンゴン滞在中、夜遊びは一度だけ「エンペラー」というクラブなのかパブなのかよくわからない大箱の飲み屋に行った。

お店の女性はほとんどが20歳前後、しかもほぼ全員が売り物だという。全員がそうするとは言わないし、私もしなかったのだが、好奇心で行ってみた。入場料は20,000チャット、女性のお持ち帰り価格は280,000チャットだという。私の両替レートで、ちょうど1万円に相当する。

軍のクーデター後は外資の撤退も相次ぎ、観光客も激減。この広い店に客はちらほらしかいない。照明が全体的に暗いこともあり見渡せないが、客数は7〜8組、15人程度。対して女性は100人以上いる。

席に案内されると同時に、3人の若い女性と担当のママさんが寄ってくる。特にしつこいわけではないが、勝手に隣の席に座って動かない。どこかのブログで「ショーを楽しみたい、購買意欲はない」とアピールしておけばしばらく売り込みが止まると読んでいたので、そう言ってショーを見ていた。

ショーといっても、7つほどのグループの若い女性たちがグループごとに違う衣装を身にまとい、歩いているだけだ。

首に花輪をかけられている娘がちらほらいる。売約済みの証らしく、気に入った娘にはさらに多くの花輪を贈らなければならないという。花輪を2つ、3つとかけられている娘は確かに他の娘より可愛いか、胸が豊かかという感じはした。黒服に聞くと、花輪を贈るのはたいてい中国人らしく、花輪をかけられた娘はあまり嬉しそうではなかった。売れない娘たちへの遠慮もあるのかもしれない。

入店以来隣に座っている娘が言うには「中国人は金は沢山だが、好きじゃない」。じゃあ何人が良いのかと聞いたら、ミャンマー人は料金が高いのであまり来ないらしい。

人気があるのは1番が日本人、近年少なくて困るとのこと。2番目が台湾人、3番目が韓国人だという。「あなたが日本人だとわかったから席に着いた」と言うが、どうして見分けがつくのかと聞いたら「すぐわかる」という。黒服も全く同じことを言っていた。

敬虔な仏教国だからか、娘たちの衣装は露出が少なく保守的だ。皆若いのに覇気が少なく、悲壮感とまではいかないが何か重いものを背負っている。長居は禁物と思い、30〜40分ほどの滞在で、入場料に含まれるビールとつまみを食べて退出した。


帰国へ

表通りは街灯があるが、裏道に入ると暗闇が広がる。ウエストポーチに入れてある小型ゴムベルト付きヘッドライト(Amazonで千円ほどのやつ)の出番だ。裏道経由でホテルに戻る。真っ暗闇の中、人がいたり野良犬がいたり。ロンジー(バッソ)をまとい工事現場でもないのにヘッドライトをつけて歩く日本人を、どんな目で見ていたのだろう。途中の個人経営食料品店で水と炭酸飲料を購入した。暗いけど、この街の治安は悪くないと感じた。

滞在を延長したくなり航空券を検索するも高い。南国にいると年末が近づいていることを忘れてしまっていた。今回は大連の歯科治療のついでだし、諦めよう。再訪を念じて帰国準備に入る。

リンリンに挨拶すると「今度いつ来る?」と聞かれた。多分来年の4月ごろにはまた来るよ、と適当なことを言っておいた。

2日前に頼んでおいた洗濯物をフロントで受け取った。手洗いではないと思うが、感じよく仕上がっていた。フロントの兄貴も感じ良く、レストランの女性スタッフもすこぶる感じ良い。

絶対に戻ってくる。

ホテルのスタッフだけじゃない。夜の世界の娘たちには暗さもあったが、それ以外——店でも屋台でもカフェでも——出会う人ほとんどが感じ良い。居心地がすこぶる良いのだ。

3日目に近くのATOM(SIMカード会社)にギガ追加しに行った時の若い男女の店員さんたちもすこぶる親切だった。形の崩れかかった私のロンジーを「直しましょうか?」と聞いて直してくれた若い男性スタッフもいた。思い出すと帰りたくなる。

復路はGrabタクシーで空港へ。最安のベトジェットを使った。追加荷物料金が高いらしいので、衣類・サンダル・余計に仕入れたロンジー3枚などはヤンゴン中央郵便局から郵送した。料金は約9,000円。ベトジェットの追加荷物料金が7,000円ほどだったことを後で知り、たまには失敗もするなと苦笑した。

乗り継ぎのホーチミンで5時間ほどの待ち時間。市内観光は無理なので空港周辺のピザハットとカフェで暇つぶしをして成田便を待つ。ピザは美味しくない。カフェのカフェラテは普通。エッグタルトも普通。

ヤンゴンの街とそこで出会った人たちが、やけに恋しかった。

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