2019年、大連で歯科治療を選んだ理由と、その後にわかったこと

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冒頭でいうと

海外(中国・大連)でインプラントや根管治療を考えたのは、日本の治療費への現実感と、長年の歯科への不信が重なったからです。2019年秋に情報収集を始め、最終的に大連の王歯科医院にスカイプで連絡し、渡航しました。費用面では確かにメリットがありましたが、1回の渡航で完結せず、インプラントは土台までしか進まないなど、想定と違う部分も多かった——というのが、この記事の正直な結論です。同じことを今検討する方には、当時と状況が変わっている点もあわせて書いておきます。


なぜ海外歯科で、なぜ大連だったか

海外でインプラントを含む治療を考え始めたのは2019年の秋頃でした。英語検索で、台湾・韓国・フィリピン・インドなど、海外患者の受け入れに前向きな施設を調べました。それぞれ長所・短所があり、最終的に選んだのは中国・旧満州エリアの大連、王歯科医院でした(当時の参考:王歯科医院の紹介ページ)。

選んだ理由は、おおむね次のとおりです。

  • 大連は日系企業の進出が多く、駐在員も多い
  • 王歯科医院は日本人駐在員のあいだでも評判が良かった
  • 王先生は東京医科歯科大学で学ばれ、その後も6年ほど日本で歯科医として活躍されていた
  • 大連市歯科医師会の副会長でもある
  • 王先生はもちろん、スタッフにも日本語ネイティブがいた
  • 近距離で航空券が比較的安価だった
  • 宿泊は1,000円前後からの選択肢が多かった
  • 食事も問題なく、むしろ安くて美味しかった
  • 交通アクセスが良かった
  • 何より費用が日本の半額以下で、渡航費などを足しても割安に感じられた(当時は1人民元あたり約16.5円と、円高気味だった)

スカイプでのやり取りは、先生ご本人も含めて3〜4回ほど。時差が1時間なので、午後2時頃にかけてみると、最初は中国語でしたが「済みません、王先生をお願いします」と伝えると日本語に切り替わりました。診療中だったため要件を伝える形になり、現状と「おおよそ2週間以内に大連へ行きたい」旨を伝え、了承を得ました。


虫歯を放置してきた背景——歯科医への不信

普段メンテナンスを怠っていたため、抜歯後に放置した箇所が1つ、根管治療が必要な本数が2本という、かなり厳しい口内でした。

なぜメンテナンスを後回しにしたか。子どもの頃からの「食後に歯を磨く」という習慣が、必ずしも良いとは思えなくなっていたこと、そして後年、「歯磨きは歯に良くない」と主張する歯科医まで現れたことも、心のどこかで引っかかっていました。

きっかけになったのは、今は倒産して存在しない会社で社長室勤務していたときの経験です。社長とは関係が良く、都心のある歯科に何度か付き添いました。その先生はいわゆる削る・抜く型で、社長は通うたびに歯を失っていき、下の歯は大半が入れ歯に近い状態に。「歳を取ると歯医者に行くほど歯がなくなる」と嘆いていらっしゃいました。本人は体質や年齢のせいにしておられましたが、北欧などでは状況が違うという話も耳にします。例えば、日本では70代で残存する歯がおおよそ15本というデータに対し、スウェーデンでは約22本という比較が紹介されることがあります(一般論としての参考)。


若い頃の習慣から、抜歯と放置へ

体はもともと丈夫な方でしたが、虫歯の最初のきっかけは、大学時代に空手部の「コワモテ従兄」の真似をして、瓶ビールの栓を歯で抜くのが習慣化したことだと思います。28歳頃、右の奥歯の下が少し欠け、数年放置したら割れ目が広がり、穴が開いて痛みが出ました。33歳で西新宿の高層ビル内の歯科にかかり、詰め物だけで済み、その後もしばらく歯科とは無縁でした。

15歳からの喫煙で歯の裏はニコチンで黒く、クリーニングに来るよう言われましたが、当時はニコチンを「虫歯予防のコーティング」のように考えて無視していました。約10年後、前記の社長の会社に入り久しぶりに歯科へ。歯根が腐っているので抜歯一択と言われ、従いましたが、抜いたまま放置しました。1本抜いた程度では生活に支障はなく、QOLが大きく下がることもありませんでした。他院で「放置すると歯が傾く」と言われても、信じられませんでした。

会社倒産と引越しも重なり月日が流れ、55歳を過ぎて左の奥歯が悪化。右下を抜いたあとは左を酷使してきたので、ある意味当然の帰結でした。


国内治療の金額と、中国・大連という選択

2011年に50歳で2回目の起業、2013年晩秋に倒産。2014年春に輸出で再起し、コロナ禍までは生活に困らない程度には戻りました。それでもインプラント1本50万円クラスは高すぎると感じていました。

英文でざっと調べると、インドやフィリピンは安いが、台湾・韓国は渡航費を考えると国内と大差ないレベルに感じました。一方、中国には日本と遜色ない技術・設備の医院が各地にあり、そのなかで日本で学び、日本でも活動された大連の王先生は信頼しやすかったです。人民元も当時は割安感があり、インプラント1本おおよそ15万円、インレー・クラウンはセラミックで2〜3万円、ジルコンでも5万円程度というイメージでした。スカイプでも日本人が日常的に通っているとの話があり、決断に至りました。


いざ大連へ——痛みとの戦いと、当時の費用メモ

日程は決まったものの、出発まで約10日間は歯痛がつらい日々でした。虫歯に正露丸を詰め、鎮痛剤を倍量、排膿散に加え、口内に良いと聞いた漢方をAmazonで購入し、正露丸と併用しながら出発を待ちました。

あとから振り返ると諸経費は安かった一方、為替は当時16.5円前後だったのに対し、2026年現在は21円を超えるなど環境は大きく変わっています。国内のインプラントの廉価化や政治・経済の関係も絡み、必要性があっても「今なら同じ選択をするか」は別問題だと感じています。

PCに残っていた当時の断片メモは次のとおりです(記憶・記録ベースなので参考程度に)。

  • 航空券(往復):成田→仁川(チェジュ航空)12,716円 + 仁川→大連(中国南方航空)11,434円 = 計24,180円(当時。今なら片道も厳しいレベル、とのメモ)
  • 宿泊:ソウル往路 仁川ドミ 1,094円、復路 梨泰院の安宿 2,200円(うろ覚え)/大連 安宿11泊 10,450円(うろ覚え以外は記録あり)
  • 治療費(概算):要治療の奥歯3本。1本は抜歯後長期放置のため最初からインプラント想定で約15万円の記憶。もう1本は根管治療のうえクラウン(インレー不可)。残り1本は結果的に抜歯以外の選択肢なし。総額20万円未満で支払った記憶がある一方、記録の細部は不明瞭

想定外だったことと、価格交渉のエピソード

インプラントは土台までで、上の部まで一気に完成すると思い込んでいた(無知だった)こと。根管治療後のクラウン納期は技工士の都合に左右され、次回渡航まで仮歯のままだったこと。こうした点で「本当に得をしたのか」と少し疑問が生じました。

国籍の話ではなく、日本の保険がない分、状況や交渉で価格が動くという現実もあります。スカイプの段階でやや高く感じたため、「ブログで紹介記事を書く予定なので安くしてほしい。倒産から立ち直ったところで、国内だと予算オーバー」などと軽く伝えたところ、「わかった。できるだけ安くする。ただしブログなどに具体的な価格は書かないで」という返答があり、その会話が渡航を後押しした一面もあります。

結果として1回では完結せず、翌年4月頃の再訪を約束して帰国しました。1本目はインプラント土台のみ、2本目は仮歯、3本目は抜歯——次回まで含めて計画しないと、かえって損になるのでは、と感じながら大連空港へ向かった、というのが第1弾の帰結でした。


旅の副次的目的(ソウル仕入れ・大連の市場)

目的は(1)大連での歯科治療、(2)AmazonやeBay、ヤフオク・メルカリ向けの仕入れのためソウル調査、(3)大連でのアンティークやパワーストーン等の仕入れ調査、でした。

(2)は往路は時間の関係で断念。復路は仁川から梨泰院の安宿へ。実質調査は翌日1日のみで、南大門・東大門四条周辺を歩きましたがピンとくるものはなく、1997年頃に何度か訪れた南大門の卸センタービルも見つからず、明洞もざっと見て仕入れはゼロでした。

(3)は事前調査の市場へ。港湾広場駅近くの宿から約1時間かけて行きましたが、古い建物はあるものの人気がなく、市内のアンティーク街へ。規模は大きく、原宿のアンティークマーケットの数倍という印象でした。地下の細いテナント群に、古くて安くて軽い転売向きがありそうな空気は感じましたが、結果はいまいち。毛沢東バッジは種類が多く割安だった一方、金日成関連は高め。国境近くまで行けば、マニア向けの北朝鮮グッズが安く手に入るのか——という程度の観察にとどまりました。

大連駅近くの海鮮店街で、宝貝を売る店があり、10cm×5cm程度のものを安かったので10個購入。毛沢東バッジは仕入れたまま未販売のものがまだ残り、宝貝は出品したが売れた記憶は薄い——2024年9月の引越し以降、在庫整理も追いついていない、というのが現状のメモです。


まとめ——第1弾は中途半端に終わったが

大連での歯科治療「第1弾」は、治療内容の意味では中途半端に終わりました。 それでもインプラント土台だけの状態や、抜歯が1箇所あるなど、渡航前より口内はむしろ「途中経過」が増えた感覚もありました。当たり前ですが、2020年4月頃の再訪を前提に動いていたのです。


この記事が届けたいこと(読者へのひとこと)

海外歯科は、費用・為替・先生の経歴・言語など、紙の上では魅力的に見えます。実際に2019年の私は、その魅力に十分引かれました。同時に、治療の段階(インプラントの上部、クラウンの納期、仮歯期間)を事前に図ででも確認する2回目以降の渡航コストと日程まで含めて総額を試算する今の為替・情勢で同じ選択が成り立つか再計算する——といった準備が、後から振り返ると大きかったと思います。

同年代で「費用は気になるが海外は不安」という方は、国内のセカンドオピニオンと見積りの比較治療項目ごとの完了定義を書面で揃えてから決めると、失敗の体感温度が下がるはずです。ご自身の健康と予算のバランスで、無理のない選択をしてください。


免責事項

本記事は、筆者の個人的な経験と所感を述べたものであり、医療行為の推奨・海外渡航の勧誘、または医学的・法律的な助言を目的としたものではありません。記載の治療内容、費用、制度、為替、渡航・治安・関係各国の情勢などは、執筆時点や当時の状況に依存し、現在と異なる場合があります。歯科治療や海外での受診を検討される際は、必ず医療機関や専門家にご相談のうえ、ご自身の責任と判断でお決めください。

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